2015.06.01射影的空間認識
幼稚園とか保育園(こども園)とかで、幼児が思い出を描いていると、ちょっとだけ気になる。ちょっとだけ。描画活動が、ダメというわけではないけれど、今日を全力で生きている子どもは、あまり過去を振り返らないだろうし、もし私たちのように郷愁に浸っていたとしたら逆に心配になります。
「あの時は、楽しかった」なんて、今が大変だったり仕事で忙しかったりする状況下の大人のセリフだから。
もっとも、多くの幼児教育機関でのソレは、描くように大人が動機づけをしているので自ら過去を振り返っている訳ではないけどね。子ども自身の動機に支えられた活動ではないってこと。
だから、気になるのだけど、ただ体験を遊びのなかで表現したり再現したりすることは、とても大切だと思います。例えば、先日遠足でいった動物園が、幼児クラスの積み木で表現されていたように。ポイントは、動物の写真や絵本など環境を整えて子どもたちのなかに、創ってみたいという動機を自然発生させることです。
さらに注目して欲しいのは、動物園のサイズに対してキリンがやけに大きいこと。
私たち大人からするとバランスが悪いのですが、子どもの目には、ものごとがこの様に映っています。射影的空間認識と言って、まだ距離や方向、大小の比率などの基準がなくて、興味関心のあるものや印象の強いものが大きく見えているので、このサイズ感の方が正しいのです。家族の絵を描いたときに、お父さんが小人でお母さんが巨人なのも、そういうことです。
そして、この正しいサイズ感で創造を繰り返すことで、子どもは、ものごとを自分と関係付けていきます。
つまり、お家に作品として持ち帰ることはできないけれど、見えたように、感じたように、友だちと一緒に「ああだ」「こうだ」とイメージを共有しながら何日もかけてつくったキリンは、まわりの世界を、少しだけ身近なものとしてくれていたのです。