2016.04.01保育士の待遇改善は経済政策。【園長のひとり言】
花見月の感動的な巣立ちから、数日。新たな年度がはじまります。認定こども園となり2年目だから、ある程度の見通しは持ってそうかと思いきや何だか保育を取り巻く環境が騒がしい。
ことの発端は、2か月前の匿名ブログ「保育園落ちた、日本死ね」。たった一人のお母さんが発した悲痛の叫びは近年、都市部を中心に慢性的となっている待機児童問題を、改めてクローズアップし、国も慌てて待機児童緊急対策を発表する始末です。
でも、今回のうねりは、ちょっと違う。希望しても入園できない児童をなくせ、だけでなく保育園を増やしているのに、この問題が解消しないのは、箱ができても、それを担う保育士が不足しているからだということになって・・・さらにさらに、人材が足りないのは、処遇の低さが原因だから、その給与を上げろってところまで波及しています。厚労省によれば、保育士の給与は全産業の平均よりも9万円くらい低いらしい。
保育の現場から見ても労働の内容や責任の重さを考えれば不適切な待遇だと思います。例えば、人員配置でいえば、0歳の子ども3人に対して保育士1人、1~2歳は6人に対して1人、3歳は20人に対して1人、4~5歳は30人に対して1人という基準で、1日8時間、年間250~60日保育します。もちろん、記録などの大量に課せられた書類を作成する時間は、これに含みません。4歳児30人を1人で、1日保育する基準って、学校のように休み時間がある訳ではないので、トイレもおちおちいけないことになります。
だから園としては、もう少し給与を増やしてあげたいのだけれど、これがなかなか難しい。なぜなら、公定価格と言って保育に要する費用(園児一人あたりに要する費用)は、上記の人員配置基準に従って国が定め、これから利用者負担(保育料)を差し引いた額しか補助金として、まかなわれないから。これは、保育園やこども園が独自で、給与額を決める裁量が、ほぼほぼないことを意味しています。
つまり保育士の給与を上げる為には、補助金か保育料のどちらかを引き上げるしかない訳で、少子化が進むなか子育て家庭に、これ以上の負担を課すことはできませんから、その矛先が国へと向いているのです。
もちろん保育士の賃金の低さは、ずっと業界が抱えてきた課題なので国や行政も把握していたはずです。が、大きく改善されることはありませんでした。その理由はシンプルで、財源がないから。
でも今回は、さすがに決断が必要です。このムーブメントの中で、しかも夏に参院選を控えて、財源がないから先送りでは切り抜けられないかと思います。まずは、この春に示され、保育士の待遇改善を盛り込むという『ニッポン一億総活躍プラン』に括目します。その本気度を確かめるために、ね。