2016.08.05乳幼児教育のパラダイムシフト【園長のひとりごと】
教育に関するかなり重要なお話。今、教育の考え方が大きく変わろうとしています。特に乳幼児期の。
例えば先日、発表された一億総活躍プランで保育士の処遇向上が約束されたのだけど、これは福祉政策でも教育政策でもなく、経済のソレだってこと。つまり、それは保育に投資をすることが経済にとって優位に働くことを示唆しているのです。
これは、もちろん待機児童の問題はあるのだけれど、乳幼児期の教育のあり方が国家にとって重要であり将来、大きな「益」をもたらすという世界の潮流に乗ってのことだと思います。
シカゴ大学の教授で、2000年にノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマンさんは、こう言います。
幼少期に質の高い教育を受けた子どもは、たとえこの時期に困難な家庭環境で育ったとしても、それを乗り越えて社会で活躍できる。また、子どもが成人後に成功するかどうかは、幼少期の教育の質に大きく影響される、と。だから、国としてしっかり投資すべきで、早期の教育に1ドルかけることで、社会に8~9ドルの利益をもたらすらしい。
その根拠としているのがペリー就学前プロジェクとアベセダリアンプロジェクトという今から3、40年前のアメリカの恵まれない家庭(アフリカ系の低所得者層)を対象にした社会研究。これらの環境下にあった子ども(ペリー就学前プロジェクは3、4歳~・アベセダリアンプロジェクトは、生後4か月頃~)に、毎日2時間半ずつ質の高い教育と、週に1度の家庭訪問を実施したら、そうしなかった群と比べて、IQに差はみられなかったものの学力調査、学歴、収入、持ち家率が上昇し、特別支援教育の対象者、離婚率、犯罪率が減少したことが追跡調査で明らかになったのです。※プロジェクトの対象とした家庭は無作為に抽出されています。
そして、ここからが大事なところ。子どもの将来を左右するその教育の正体は、「非認知能力」を育成することだと言われています。初めて耳にする方も多いかもしれませんが、この「非認知能力」とは、今までこの業界が、多くの幼稚園や保育園が、重要視してきた「記憶する」とか「覚える」とか「理解する」、「考える」のように到達度を数値化できる能力(これらを認知能力と言います)ではなく、「精神的健康」とか「根気強さ」とか「注意深さ」とか「意欲」とか「自信」という潜在能力を意味しています。
で、さらに大事なことは、この非認知能力は、今流行っている知識や技術の習得を目的としたような早期教育ではなく、子どもの自発性を大切にした活動や子どもが自ら考えた遊びのなかで育つというのです。
これらに関して、OECD(経済協力開発機構)というヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め34 ヶ国の先進国が加盟する国際機関も同じ見解で今まさに、これが幼児教育の世界的なトレンドとなっているのです。日本初の国立幼児教育研究センターが設立(平成28年4月1日~)されたのも、そういうこと。
あ、それから、それから、この「非認知能力」は、「認知能力」をも同時に高めていくということを最後に付け加えておきますね。