2017.09.01女性が活躍するということ【園長のひとり言】
3歳児神話という嘘。子どもが3歳になるまでは母親が子育てに専念すべきであり、そうしないと成長に悪影響を及ぼすという考え方がありました。ありました、と過去形にするのは科学的に否定されているから。
先日もホンマでっか!?TVで脳科学者の澤口先生が全くの嘘だと言っていました。ついでに英語などの早期教育も意味がないって。
もちろん乳幼児期に母と子が豊かな時間を一緒に過ごすこと自体は、子どもの成長に大きなプラスとなりますが、母でないとダメという訳ではありません。だとすれば、保育者や保育園の立場がありません。
それらは歴史的にも明らかで、そもそも日本でお母さんが専業主婦として幼い子どもを育てるようになったのは1950年代以降のサラリーマンという働き方が一般化してからの話。
それ以前の日本の主な産業は第一次産業とか第二次産業、つまり農業や漁業であり、そのなかでも農業を営む家庭が圧倒的多数をしめていたので基本的にはどの家庭も共働きでした。
それはそうですよね。今のようにオートメーション化されていない農業において労働力は人そのものであり、妻が家事と育児に専念していたら収穫などできません。だから、どこの家でもお母さんは畑や田んぼで精を出していたのです。
では誰が代わりに育児していたのかと言えば・・・労働力にはなりえないけれど人生や子育て経験が豊かな人です。そう。おばあさん。もっと言えば地域社会全体で子育てをしていたのです。戦前の日本で既婚女性が家事と育児に専念できたのは、ごく限られた富裕層だけだったのです。
ね、3歳児神話などありえないのでしょ。そういう環境で育った子どもたちが高度成長期を支え、今の日本を創ったわけですから。
そして奇しくも今、少子化によって家族の構造というか家庭のライフスタイルが高度成長期以前のものになろうとしています。
少子化は子ども数の減少だけではなく大人になる人、つまり働く人の減少を意味しています。ただし、このまま労働人口を減していくと現在の経済規模や社会構造を維持できなくなるので黙っていられません。当然、潜在的な労働力に期待をするようになります。それが女性であり専業主婦という訳です。
少子化と待機児童の因果関係もココにあります。この傾向は、今後もっともっと顕著になります。が、80年前と異なるのは育児をしてくれた人生経験豊かな世代までも労働力として充てにしてしまっているということ。
もはや女性の活躍なしではこの国を維持することはできないのです。もちろん幼い我が子をお母さんが家庭で大切に育てるのは尊い行為です。
だからこそ必要なのは在宅で育児をしようと保育機能を利用しようと、どちらを選んでも子どもが幸せに育つ環境を作ることです。待機児童なんてもってのほか。保育園やこども園がすべての女性の生き方、その多様性を保障する社会的資源とならなければならないのです。