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2018.05.01対象の永続性【園長のひとり言】

赤ちゃんの人見知りという不思議。個人差はあるけれど、おおよそ6か月から始まるこの心理傾向をこども園で良く目にします。近年、お母さんの育児休業明けで入園するケースが多いので、慣らし保育という工夫はするものの入園当初はどうしても子どもたちは泣けてしまいます。

 

もちろん、お父さんやお母さんから離れて日中を過ごすわけですから最初は仕方がありません。ただ、例えばお母さんの産前産後休暇あけ生後3か月くらいで入園するとご家族と離れることでもそうなりません。

 

その違いは生後6か月くらいから対象(ひと・もの)の永続性(ジャン・ピアジェ・発生的認識論)という発達を獲得するから。

 

これは少し難しいのですが対象物が実体性をもつ永続的な存在として捉え始めることで、視界から消えた対象が存在し続けていると認識できる能力を言います。

 

例えば、テーブルの上に置かれたお人形を誰かが布で隠したとします。私たち大人は布で覆われただけで、お人形はそのままテーブルの上にあるということが分かります。

 

が、低月齢の赤ちゃんは、見えなくなった物が存在し続けていることを理解できないため、人形がなくなったと認識します。でも生後8か月くらいになってくると、かぶせられた布をずらしてお人形を探したり、欲しがって泣いたりするようになります。これは、未成熟な状態ではありますが見えていなくても物が変わらずそこにあり続けることを理解していることを意味しています。

 

そして、対象が「ひと」であれば「ひとの永続性」を理解したということであり、見えなくなったお母さんやお父さんを探すようになります。そして、これらの発達が人見知りの背景にあったのです。

 

また「対象の永続性」の理解は、乳児のなかに「表象世界(機能)」が育ってきていることを示しています。表象とは、こころの中のイメージや記憶のようなもので、これが目の前にない物や出来事、行為などをある程度意図的に構成、操作、変換することを可能にしてくれます。

 

私たち大人もこの機能を使って様々なことを記憶したり思い出したりして、またそれを参考にしながら行動しているのです。

 

さらに、この表象機能は次に獲得する「象徴機能」の基礎(原始的な発達)となっています。これは具体的に見たものや経験したものを、しばらく時間をおいて場所を変え自分なりのやり方で模倣し表現することで、みたて・つもり遊びやごっこ遊びはこの発達を下敷きにしています。

 

で、さらにさらに、この頭の中にイメージをつくりあげる遊びは論理性のある構造構成を必要とする為、数概念の習得や言語、文字の発達に大きく関わっているというわけです。ね、不思議でしょ。

 

人として社会で生きる大切な能力が赤ちゃんの頃からずっと繋がっているのです。そしてこれらの連続性を少しだけ意識して子どもたちと向き合ったとしたら、私たち保育者の方にも変化があるかもしれません。

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