2022.08.01答え合わせ【園長のひとり言】
それでは先月の答え合せ。下の2つのうち散歩(保育)の道具として積極性が高いのは、どちらでしょうかという問題ですが、答えはⒷのバギーです。
なぜか...実はこの問題、ちょっと難しい。研修会等で他の園の保育者さんに出しても答えが割れくらいです。しかもⒶを選ぶ保育士さんが多い。
それでは解説します。まず、これら散歩の道具なのですが、使用するにあたり対象となるのは生後12か月くらいから1歳児くらいということ。そして散歩のねらいが園内にはない景色や刺激に触れるのを主としていること。
で、この2つの要素に発達の視点を加えると右側のバギー、一択となります。この時期、子どもは腰が据わることで座ったり歩行ができるようになったりします。さらに、そのことで両手が自由となり、指差しをするようになります。ちなみに指差しの発達には4段階あって順序は以下の通り。
①指向のゆびさし(8~10ヶ月)相手が指さした方向をみる。
②要求のゆびさし(12ヶ月)自分の欲しい物を指差しで相手に知らせる。
③定位のゆびさし(12~18ヶ月)何かを見つけた時に伝えたくて指差し、振り返り。
④可逆のゆびさし(18ヶ月)「~はどれ?」に応じて指差して答える。
ここで注目して欲しいのは②要求のゆびさしと③定位のゆびさし。この時期の子どもは興味や関心ごとに出会うと指差しで意思表示する特徴があります。さらに、散歩の目的が新たな景色や刺激に触れることだと考えれば、両手の自由は必須条件。
その視点でⒶを見れば、足元の不安定さから淵をぎゅっと握らないと移動できないことが分かるはず。つまり、両手が不自由で指差しができないってこと。しかも、身体的な発達と言語の発達は相互作用(身体の各部分が相互に作用しあって、育っていくと共に、生活している環境から刺激を受けながら相互に作用しあう)の関係にあって、指差しの発達が「ああ」、「うう」と発語を促していくことまで考慮すれば納得して頂けると思います。
と、これはただの一例ですが...ココの保育の一つ一つにはちゃんとした理由や根拠があるってわけです。何を言いたいかといえば子育てに絶対正しいとか間違っているとかはないけれど、こども園として、より健やかな子どもの育ちを探求するならば感覚や経験だけではたどり着けない領域があるってこと。だからこそ私たち保育者は学び続けなければならないのです。