2009.05.15道徳のみなもと【園長のひとりごと】
突然ですが、皆さんはDREAMS COME TRUEってご存知ですか?未来予想図II やLOVE LOVE LOVEなど数多くのヒット曲を世に送りだし、名実ともに邦楽界を代表するグループです。そのドリカムが2007年にリリースした曲「大阪LOVER」。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのアトラクション「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」のために書き下ろされたもので、遠距離恋愛をする女性の気持ちを歌った曲です。聴いたことある方もない方も状況を想像しながら読んでみて下さい。
“最終に間に合ったよ0時チョイ前にそっちに着くよ” メール短すぎたかな?私も素っ気無いけど 新大阪駅まで迎えに着てくれたあなたを見たら いつもはいてるスウェット 今日もうちへ直行か… 万博公園の太陽の塔久々見たいなぁ! 明日さ、たまにはいいじゃん!! 「そやなぁ・・」って行くの?行かないの? 何度ここへ来てたって 大阪弁は上手になれへんし 楽しそうにしてたって あなた以外に連れはおれへんのよ 近そうでまだ遠い大阪
言いたいこと言えなくて 黙ってしまうのも良くないよね 毎週は会えないから喧嘩だけは避けたいし 通いなれた道がいつもより長く感じるこの空気 御堂筋はこんな日も1車線しか動かない うちに着く前に何か飲むもの買って来ようか? 気分変えようとしてるんじゃん! 「そやなぁ・・」っているの?!!いらないの?!!! 何度ここへ来てたって 一緒にすまへんか?とは言わないし 楽しそうにしてたって そこは内心めっちゃ寂しいんよ 近そうでまだ遠い大阪
覚悟はもうしてるって 大阪のオバちゃんと呼ばれたいんよ 家族と離れてたって あなたとここで生きていきたいんよ 東京タワーだって あなたと見る通天閣にはかなわへんよ なんでそんなに笑ってん? 一生に一度の告白やんか 恋しくて憎らしい大阪
何度ここへ来てたって また来るのはあなたがおるからやもん 楽しそうにしてたって それはあなたがここにおるからやもん どんだけ喧嘩したって あなただけほんまに大切やもん もう「こっちこいや」って言って ああ、催促してしもたやないの 近そうでまだ遠いか 大阪 恋しくて憎らしい 大阪
この歌詞を吉田美和さんが、あの声で歌うわけです。皆さんが遠距離恋愛を経験されたことがあってもなくても、この女性の切ない想いが伝わってきませんか。見たことも会ったこともない虚構の世界の女性であるにも関わらず…です。男性である私でも主人公の気持ちが分かるような気がします。
で、ここまで書いておきながら別にこの曲をPRしたいわけではありません。ここからが本題です。歌詞を通して主人公の気持ちにふれる、つまり、相手の気持ちを自分に置き換えたり、相手の立場になって考えることで自分以外の他者の気持ちを深く理解することができるということです。この能力を役割取得能力(ローレンス・コールドバーグ)と言いますが、大人である私たちは程度の差はあれ、ごく自然に持ち合わせています。けれど、乳幼児期の子どもは、この能力がありません。ないというよりまだ発達していないのです。ですから、他者の視点に立ってものごとを見たり考えたりすることができませんし、ましてこの歌詞を理解することなど当然できません。
このことを日常生活に置き換えてみましょう。例えば、お仕事をした後でとても疲れているさなか忙しく家事しているお母さんに子どもが一緒に遊ぶことを求めてきたとします。内心かまってあげたい気持ちはありながらも出来れば後にして欲しい。けれど、子どもは分かってくれない。そんな経験をしたことはありませんか。お母さんのかまってあげたいけど今はそれをすることが難しい。この気持ちを理解出来ないのです。大人には容易に分かることでも分からないのです。役割取得能力が発達していないからです。その気持ちを本当に理解するためには、自分の視点からではなくお母さんの立場に立って考えなくてはなりません。
だからと言って、子どもに人の気持ちに立って考えることを教えなくていいと言っているわけではありません。人の気持ちになって考えることは道徳心の源です。大切なことは、こういった特徴を理解しながら、いずれできるようになるということを見据えてことばを添え、子どもの視点で分かるように説明していくことなのです。
最後に言い忘れていましたが、この役割取得能力は、6歳くらいから徐々に発達していきます。